事例紹介

2022.12.08

桑沢スペースデザイン年報2021-22

活用技術:特殊製本・小口染め

発行:専門学校 桑沢デザイン研究所 様
編集:瀬戸内編集デザイン研究所 // Setohen 宮畑 周平 様/元行 まみ 様
デザイン:久我 遥 様

今回はデザインの専門学校である桑沢デザイン研究所様の「桑沢スペースデザイン年報2021-22」についてご紹介させていただきます。

今回、インサツビトでは桑沢スペースデザイン年報の印刷・製本・加工を担当させていただきました。

こちらの冊子の印刷・製本・加工を担当させていただくことになたのは、インサツビトへのお問い合わせがきっかけです。
「袋とじのまま製本して小口染めができるところを探しているんです…」
初回の打ち合わせでそのようにお伝えいただいた時は驚きましたが、インサツビトとしても挑戦させていただきたいとなり実現できる方法はないか検討・検証させていただきました。

どのような部分が難しかったかも含めて詳しくご紹介させていただきます。

今回の「桑沢スペースデザイン年報2021-22」ですが最大の特徴は袋とじのまま無線綴じで製本している、という部分です。

小口が袋とじになっています。

通常、無線綴じの場合は袋側は背になります。製本後に小口側を断裁することでページのがたつきがなくそろった仕上がりになります。
しかし今回は「袋とじにしたい」というご希望をいただきましたので通常背に来る袋側を小口側に持ってくる必要がありました。そうすることでまずきれいに製本できるかどうかという問題が発生しました。袋とじ、という性質上、小口が断裁できません。そのため綴じた時点でずれてしまうと小口がずれたままの仕上がりになってしまいます。
そこで実際の作業は次のような工程で進めました。
袋とじの部分を小口のみにし、手作業でしっかりそろえた上で本文のみ綴じ、その際少量の水分を加えて袋側のふくらみを抑え、表紙を巻いて天地を断裁する、という手順です。
半分以上手作業で作業を進めていたため通常よりも時間はかかりましたが、仕上がりもほぼずれがなく製本することができました!

小口側のずれはほとんどありません。袋綴じも膨れ上がっておらず一見するだけでは一般的な無線綴じのようです。

また他にも目立った特徴があります。それは袋綴じと同時に小口染をしているという部分です。こちらも非常に珍しい組み合わせです。

しっかり黒色で小口染めされています。

小口染めは需要が減っているということもあり現在では気軽にできる仕様ではなくなりつつあります。金染などはまだ需要があるそうですが、今回は黒色。そして袋綴じとの組み合わせ、ということで前例はありませんでした。
一般的に小口染めは機械で行う場合も手作業の場合も本文の中に入らないようすることが一番注意する点です。しかし今回は小口を袋綴じにしているため、一方向に重ねて一度に染めることができず、互い違いに重ね合わせて小口を染める必要がありました。
またこちらの小口染めは染めた後に仕上がりをよくするために磨き上げています。

このような形でご希望いただいた袋綴じ+小口染めを含めた冊子を製造することができました。

それではもう少し冊子の詳細を写真とともにご紹介いたします。

今回の冊子は表紙には「アラベール」本文には「モンテシオン」という用紙を使用しています。どちらもざらっとした質感が風合いのある用紙です。

表紙は見えるか見えないかくらいに白色でタイトルを印刷しています。
モンテシオンは繊維質な用紙です。
繊維質な用紙を使用しているため小口染めが染み込んだ仕上がりです。
柔らかい用紙のため手でも割くことができますがカッターを使用するときれいに切れます。
カッターの刃が悪く手で割いたような仕上がりになりました…
あえて繊維質な用紙を使用することで切り口も様々な仕上がりになっています。
表紙は質感を優先して表面加工はしていません!そのため汚れがありますがあじとして許容していただきました。

いかがでしょうか?

今回の製本は米子にある製本会社様にお願いしたのですが、サンプル作成時にデザイナー、編集担当者の皆様と伺い実際に伺い、対面で打ち合わせをしたことで具体的なイメージを共有することができました。

その結果、こうした特殊な製本の冊子を制作することができたと感じています。

こんなことできるかわからない…!ということでもまずはぜひインサツビトにご相談下さい。
次回の事例紹介もお楽しみに!

桑沢デザイン研究所様 公式Instagramでも冊子を紹介されています。

Topへ戻る